夢の共演

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       ◎4月20日


 新緑の並木を抜け、腹にこたえるエンジン音をドゥルルルと響かせながら1台のバイクが国会議事堂敷地の東門に近付いて来る。

 門衛に就いている警備隊・外警新人の三井は、フルヘルメット姿の相手に一瞬身構えた。だがそんな彼の緊張を解きほぐす様に、先輩の池上がポンと三井の肩に手を置くと来館者に向かって―にっこり―微笑んで出迎えた。
「ご苦労様です、内藤さん!」



 危機管理局テロ対策部長・内藤の到着により、石川隊長および篠井副隊長以下、非番の者も含めたJDG全班長が会議室に集められた。
「3日後の式典の件はもう聞いているな?!」
 定位置に座った面々を見まわした後、内藤は隊長の石川に聞いた。 
「はい。先ほど官邸と外務省の双方から連絡があったばかりです。ちょうどこれから班長間に連絡するところでした」

 20分ほど前に外相第一秘書官の田山からは電話が入り、その後すぐ外務省の担当官が来館し、つい今しがた帰ったところだった。その為、室管理班長の三舟以外にはまだ知らされてはいなかった。
「そうか…外務省のやつら、急に決めやがるからな(〜〜;) んじゃ、まずお前さんからこいつ等に説明をしてやってくれ」
 はい、と、一同に向き直った石川が、外務省からの通達概要を班長達に説明していく。

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   3日後の23日午前中に、岸外相と藤倉官房長官の
   案内で外国要人が来館する。
   中庭にての歓迎記念式典後、館内視察が行われる。

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「………と、いうことだ。」
 石川の説明が終わると、西脇がにやりとしながら口をひらいた。
「でも、珍しいですねぇ…VIPとは言え、政治家でもないし、ましてや国家元首でもない方の“接待”に『議事堂視察』が盛り込まれるとは…。外務省に何か魂胆でもあるんでしょうかねぇ〜…」
「役人どもの考えるこった、ろくな事じゃぁねぇだろ、どうせ(ーー;) まっ、そんなこたぁ〜オレ達の知ったこっちゃぁねぇがな“護る”こっちの身にもなってほしいもんだぜ!」
 含みを込めた西脇の言葉に、不精髭の顎をぞろりとなぞった内藤が、ふて腐れたように愚痴ってみせれば、一同に笑いが広がった。

 その苦笑がおさまるのを待って、石川が内藤に先を促す。
「こうして内藤さんがいらっしゃるということは“何”かテロ情報があるんですか?」

「ああ。 まったく、ありがたくないことだがな…」
 
 内藤はさもいまいましそうに、いくぶん表情に険しさを滲ませながら、斜め前にいる岩瀬に視線を向ける。
「ISPLに居た岩瀬なら、あの“公爵”の噂は聞いたことがあるだろう?!」
「あ、はい、少しなら…。 オレは直接ガードに当たったことはありませんが、ISPLの警護対象者リストの中でも、最重要ランクに名の挙がっている要人ですから、資料には目を通していました。若干4歳の頃から現在に至るまで執拗に命を狙われ続けている…と聞いています。」
 岩瀬の言葉にアレクとマーティーも頷いている。
「私も軍に在籍中、ヨーロッパに駐屯していた時に多少は公爵に関する噂は耳にしています。あちらでは日本で感じる以上に注目される人物ですね。」
 補足するように篠井も言った。

「その通りだ。地元欧州でも日頃からめったに公の席には出ない方らしいが、それ故尚の事、たまに珍しく姿を現された時には、必ずといっていいほど襲われているらしい。数年前に来日された時も妃殿下主催の迎賓館でのレセプションで毒殺未遂事件があった事は知っているか?」
 面々を伺えば、その事件なら覚えていると、それぞれ頷き合っている。
 あの時の警護は宮内庁が仕切っていたが、職業柄、皆その手の事件は管轄外の事でも関心を持ってニュースなどはチェックしていたのだ。

「前回の時は、まったくのプライベートだったらしく、公爵お一人がお忍びで来日していたらしい。 そのため公爵家側の護衛は同行していなかったが、今度は公式来日と云うことで、自前の“近衛官”と呼ばれる専属のSPが本国から一人同行するという事だ。」
「では、今回の『議事堂視察』でも暗殺計画の可能性大と言う事ですね。」
「ああ。確たるものじゃぁないんだが気になる情報はある」

 石川の問に、内藤が用意して来たディスクをPCにセットすると、一同はモニターに注目する。

「改めて確認するまでの事はないと思うが…この方が公爵だ。」
「ヒュ〜♪ 美形カップル〜」
 思わずアレクが囃し立ててしまうのも無理からぬこと。モニターに映し出されていたのは、先ほど話題となった数年前の来日で迎賓館を訪れた折のタキシード姿の公爵と、ドレスアップしたそのパートナーの麗しくも華麗な姿だった。

「公爵が私設の情報機関を持っているのは知っているな? 実は、その“EPNO”東京支局長がオレの知人なんだ。彼からの情報によると、ここ数年の調査で解った事だが、一連の公爵暗殺計画には“無憂団”が絡んでいるらしいとの事だ!」

 その場の全員に、低いざわめきと共に緊張感が走った。

 “無憂団”とは・・・世界的な暗殺テロ組織なのだ。だが、その実態は未だ何も解明されてはいない、謎の集団である。

 かつて、JDGも無憂団から放たれたテロリスト達の魔手から、議事堂を守りぬいた事が何度かある。
 その時の死闘を今また彼等は鮮やかに脳裏に蘇らせているのだ…


 内藤の持っている危機管理局独自のデータと、EPNOから提供された、無憂団が絡んでいると思われる過去の公爵暗殺未遂事件のデータを検証しながら、あらゆる状況を想定して警備対策をたてていく。

 新たな戦いの幕が今、ここに開かれた・・・



                               つづく



なんとか始まりました。
第一話はJDGがメインです。
次回からは、ちょっと日付が遡っていきます。
そして、しばらく他のキャラの場面がつづきます(^^;)

どうか見捨てないでくださいませぇ〜;;













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