花束の行方
笑顔をいっぱいに浮かべた津川の姿が、自動ドアの向こうに去っていった。 「・・・いいかおりだ・・・」 胸に抱いた花束に、目を細めながら鼻先を埋めて石川が呟いた。 「奇麗だな」 そういいながら肩越しに見上げるように笑顔で振り返る。 「えぇ、とても奇麗です」 答える岩瀬の面にも、やさしい微笑みが浮かんでいる。 (そんな貴方の笑顔こそ奇麗なんですよ…悠さん) こんな所で“それ”を口にすれば、叱られてしまうのがわかってるので、そっと心の中だけでささやいてみる岩瀬。 「それ…どうしますか? 寮の部屋に飾りますか?」 「う〜ん、そうだなぁ〜。でも、みんなの代表って事で貰ったわけだから、俺が一人占めするわけにはいかないしなぁ〜」 ちょっと考えていた石川は「そうだっ!」と、思い付いたように無線機に手をあてた。 「――石川だ――今時間あるか?――そうか、すまないが食堂まで来てくれ!――あぁ、たのむ」 にぎやかな食事時間はとうにすぎ、今はこの広い食堂の中、テーブルについている者は一人もいない。厨房からは調理班達のてきぱきとした作業の声が聞えている。 そんなまわりを気にする事なく有吉は、るんるんるん♪と楽しげに、花鋏をにぎっている。 広い食堂の中央に、岸谷の許可を得て仮設の花台をしつらえ、中振りのアレンジメントを創作しているのだ。 先刻、教官から無線による指示があった。 教官が津川監督からプレゼントされた花束を「みんなが集う“ここ”に飾ってくれ」、と! 敬愛する教官から満面の笑顔で依頼されて、はりきらない輩などこのDG隊員のなかにいるわけがない! そんな有吉に、ここの主の岸谷も応援の手を差し伸べてくれた。 それは彼が調理用に栽培しているハーブ畑の中から、ちょうど今、可憐な花を咲かせている物を「好きに使え」と一抱え提供してくれたのだ。「余った物は、料理に使うから気にするな」とも言ってくれた。 岸谷の言葉に甘えて、津川監督からの花に似合いそうなハーブを選び、使っていく。 花材が増えた御陰で小さいながらも、とてもゴージャスなものができそうだ。 「るんるんるん♪ 教官のあの笑顔のような、爽やかでぇ〜エレガントでぇ〜…ふふ…そして、どこかしら可愛らしく♪ ふふふ」 楽しさについつい鼻歌まじりのつぶやきが出てしまうp(*^0^*)q 食堂という場所柄、360度のアングルで、どのテーブルから眺めてももいいように仕上げていく。 最後の鋏を入れて、2,3歩後ろに下がって眺めてみる。 「うん! OK♪」 ひとり納得してガッツポーズをとってると、厨房のカウンター越しに岸谷達が拍手してくれた。 有吉は照れながらも、親指を立ててウインクを返してみせる。 そして無線機のスイッチを入れた。 「あっ、教官――有吉です!――できましたぁぁぁぁぁvvvvv!!」 おわり♪ |
読んでくださってありがとうございます(*^^*)
これはGD12巻・P151のその後、という設定で書いてみました。
ネタが古くてごめんなさい(^^;)
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