カーニバル狂想曲♪

―乙女達の競演―

≪前編≫

 石川と岩瀬はひたすら逃げていた。
 まるで、JDG恒例の『コミュニケーション・ゲーム』の時同様に…いや、もしかしたら、その時以上かもしれない;;

『隊長!そちらは危険です! 2ブロック先で待ち伏せされています!!』

 無線から三舟の危機迫った声がかかる。
 中央管理室で全館くまなくモニタリングしながら、石川と岩瀬に情報を伝えてくれているのだ。
『岩瀬、そこからならW9通路を通って6Fへ登れ。あそこなら今は手薄状態だ!』
「了解!  隊長、こっちです!」
 すかさず岩瀬は石川を護りながら誘導する。

 やっと追手の気配のないところまで辿り着き、二人はほっと一息ついた。
「他の連中は無事だろうか…」
「西脇さんあたりは、要領よく逃げ延びてるでしょうけどねぇ(^^;)」
「なんか… テロより恐いな」
「ですよ!! テロ犯やCゲームなら、相手を殴ることもできますけど…;;」
「そうだな、さすがにあの人達には殴り掛る事ができないもんなぁ〜(苦笑)」
「あの笑顔で迫ってくる姿がメチャメチャ恐いですぅ〜(><;)」
「云えてるな(^^;)」
 はははと笑顔を交わし合い、つかの間ののどかさを味わいながら巡回がてら歩いていると、先の方からキャラキャラと明るい声がかすかながらも聞こえてきた。
「あれっ、ここにも包囲網が延びて来たみたいですよ」
「ゆっくりしている暇も無いワケだ。 行くぞ、岩瀬!」
「はい!!」


        


 冷たい空気がキンと張り詰めたような冬のある日、国会議事堂内で働く女性達全員に、1通のメールが一斉送信されていた。

  女性職員各位

 この度、日頃の皆様のご苦労への労いと、各部署間の交流を兼ねて、大々的な親睦イベントを催す事とあいなりました。

 イベント名 【乙女のカーニバル】
 日 時 : 202○年2月△×日(木曜日) AM11:00〜PM5:00
 場 所 : 国会議事堂全館 及び 敷地内外庭 
       (※立ち入り禁止区域は省く)

 モデルの催しは、ドイツ( 主にラインラント地方)で冬に行われている、お祭りのひとつです。
 「Unsinniger Donnerstag(馬鹿げた木曜日)」とか「Weiberfasching(女のカーニバル)」などと呼ばれています。
 この日、午前11時11分11秒を過ぎると、女性はネクタイ姿の男性を見つけると、片っ端からハサミで切ってコレクションしていく、という無礼講の許される日なのだそうです。

 この『ネクタイ切り』を、ここ国会議事堂でやりましょう♪ と、いう事です。

 その日、国会議事堂敷地内に1歩でも足を踏み入れた男性のネクタイを、チョッキンと切り落として、楽しくコレクションしませんか♪
 もちろん対象者は、部署も地位も関係なんてありません!同僚、上司、出入り業者、マスコミ関係者、代議士先生&秘書、そしてJDG隊員までも含まれていますvv
 (※但し、一般見学者は除外いたします。)

 政府、各官庁、各業者及び、警備委員会には、すでに許可を取り付けてありますので、お咎め無しの完全無礼講です! ご安心ください♪

 参加ご希望の乙女は1月25日までに、実行委員会まで下記項目をメールにてご連絡下さい。
  件名:『カーニバル参加表明』
  @部署名  Aお名前  B意気込みメッセージ

 以上、3項目です。
 参加希望者には折り返し、ルール等の詳細メールをお送りいたします。

 多数のご参加をお待ちしておりますvv

                         乙女のカーニバル実行委員会

 このメールを受け取った殆どの乙女たちが、狂喜乱舞せんばかりに喜び、喜色満面に即効で『参加表明』メールを送信していた。


 その夜のJDG隊員寮の某一室。
 鶴田、香取ほか数人の女子隊員が集まっていた。
「やっぱり、女の子みんなに、このメールが送られてるんだね」
「そのようね」

 それぞれ手元のプリントを眺めて、ちょっと溜息をついてしまう。

「どうするぅ〜 参加してみる?」
「う〜ん… めちゃ面白そうなんだけど、私たちまで参加してもいいの?任務に支障をきたして、隊に迷惑掛けないかしら…」
 躊躇する面々の中から、香取が身を乗り出した。
「あのね、今日このプリント見てたら有吉先輩に見つかっちゃったの、それで三舟班長にお伺いを立ててくださったの。そうしたら、班長が『警備委員会から、特別休暇扱いでの参加許可通達が来ているから大丈夫だ。参加・不参加は各自の自由意志だぞ』っておっしゃって下さったの!」
「そうなんだぁ〜vv なら私、参加してみよっかな♪」
「じゃぁ、皆で参加するか!」

 相談の結果、ここに居る全員参加する事に決まり、さっそくこの部屋の住人・鶴田が、PCを立ち上げ、連名でカーニバル実行委員会宛に『参加表明』メールを送信してみた。
 すると、数分もたたないうちに詳細なルールが書き込まれた返信メールが送られてきた。

「なになに、ふむふむ…『切っ先の尖ったハサミ及びカツター等ナイフは使用厳禁』なのね。」
「そりゃそうよ! 通常だったら、私達JDG隊員以外の人が、ハサミやカッターなんか持ち歩いていたら、職質して没収あたりまえなんだから、せめてそのくらいの制約をしてもらわないと警備上とっても危険よ!!!」
と、ついつい隊員モードの思考回路になってしまう。

「えっと…『ターゲットのタイに手をかける時は「頂戴いたしますvvv」と挨拶をしてからハサミを入れること』だってぇ〜♪」
「なにそれぇ〜キャハハハ」
「このルールブック、誰が考えたのかしらね。 これ見て〜vv 面白〜い♪『行動は乙女らしく淑やかに!けっしてターゲットを“押し倒し”たり“投げ飛ばし”たりなさいませんように』ですって。くすくすくす」
「あら、残念だわ(ーー;) あのいけすかないS議員とか△△省のM次官なんか胸倉掴んで吊し上げてやりたいのに!!」
「あ〜それ賛成〜♪ ついでに□□局のK局長と◇◇庁のY部長も!あのセクハラオヤジめっっ!!」
「記者クラブに出入りしている☆☆新聞のT記者も大嫌い〜!! 担当替わってくれればいいのにぃ〜!」
 みんな日頃の鬱憤が溜まっているようだ。

「逆に、“押し倒し”たくなるような素敵な人が国会には居ないわよねぇ〜(TT)」
「うん、そうよねぇっっ! あ〜ん、警備対象にもっと潤いが欲しいわ〜」
 ささやかな乙女の願望をちらりのぞかせてみたりして…

「でもそれを云うなら、うち(JDG)はものすっっっっごく恵まれているわよ。 なんたって隊長を筆頭に素敵な隊員がわんさか居るんだものぉ〜vvvvv」
「と云うことは、参加乙女たちからターゲットとして一番狙われるのが、やっぱり隊長になるんじゃぁないかしら?!」
「げっ;; そうよ! バレンタインのチョコの数もハンパじゃぁなかったもんvv」
「な…なんだか、当日は凄いコトになりそうだわね…(^^;)」
「私達でさりげなく、DG隊員狙いの乙女達から隊長をガードしないこと?!」
「「「うん♪」」」

 それぞれ乙女達は高鳴る野望を胸に、日々の業務に精を出すのだった…


 To be continued…

や、やってしまいました(^v^;)

拍手御礼SSの【尾上レポ4】から発生した特別番外編です。
はっきり云って“お遊び”ですぅ〜♪

次の後編で終わるか・・・はたまた中編・後編となってしまうのか?!
私にもまだ解りません(f^^;)











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